日記

雨とお爺ちゃん

僕は大学4年生の冬、就職も決まり、実家に戻っていて、お爺ちゃんの入院に付き添っていた。確か、お母さんやお父さんと、交代しながらだったと思うけれど、そこらへんの記憶は曖昧だ。

小さなポケットラジオを持ち込んで、お爺ちゃんのべッドの脇に布団を敷いて、よく「オールナイトニッポン」を聴いていた。福山雅治とか、aikoのオールナイトニッポンを楽しみにしていたのを覚えている。

お爺ちゃんのオムツ対応をして、またラジオを聴く。お昼には戻って、また夕方、病院に帰って来る、そんな生活。

お爺ちゃんは、最初は少し話していたと思うけれど、いつからか少しずつ、会話が出来なくなっていて、それでも、まだ僕が通っていた頃は、それなりに話せていたと思う。

そんなお爺ちゃんには、肺に溜まった水を抜くドレーン、管のようなものが肺につながっていて。その機械からシューッと小さく音がした。その音を聞いて、毎夜、お爺ちゃんは、

「けんちゃん、雨が降ってるから、帰ろう」

と、声をかけて来た。毎夜、何度も。僕はその都度、お爺ちゃんに、

「傘を忘れたから、明日帰ろう」

そう、言い聞かせて、眠りを促した。何度も、何度も、そう話した。

雨が降ると、たまに思い出す。

お爺ちゃんに

「傘持って来たから、うちに帰ろう」

そう言いたかった。お爺ちゃんは喜び勇んで、帰ったかな?そんなお爺ちゃん、見たかったな。家に、連れて帰りたかったな。

ごめんね。

ABOUT ME
kenken
2015年11月に肺腺がんステージ4、余命1年の宣告を受ける。 只今、元気にアディショナルタイムを駆け抜け中! 呟いたりもします。 noteも始めました。