日記

everybody love somebody sometime

「せーーんせーーーー!」、「うーーーーー、あーーーーーー!」

今回の入院初日の夜から、そんな叫び声が廊下にこだましていた。入院恒例のもの。だけど、何日かしたら、夜は静かになり、日中だけ、叫び声が廊下に響くようになった。たぶん、眠剤でコントロールしてるのかな?

入院すると大体、1人か2人、叫び要員がいる。「せーーーんせーーーー」「あーーーーーーー!」その声は辛い時の声で、僕が辛い時、大声で叫んだら同じようになるかな?と思うと、とても苦しくなる。決してうるさくはない。辛く、苦しく、悲しい叫びだ。

そんな叫ぶ人や、怒鳴り続ける人、今まで、いろんな人がいた。

寝言を言い続ける人

同室のおじさんで、寝言をずっと話す人がいた。ずっとというのは、本当にずっと。1時間、2時間、3時間と、寝言を話し続ける。ファミレスで働いているらしく、部下をものすごい剣幕で怒り続けて、ずーっとその人の悪いところを責め続けたりしていた。

あまりにも毎日2、3時間話し続けているので、看護師さんには伝えたけれど、サラッと流された。ヒソヒソ話すのではなく、普段会話する時のボリュームで、半分以上は怒って、話し続けるのだから、普通じゃない。

きっと、職場でのストレスが溜まりに溜まってるんだろうなぁと、察して忍びないけれど、これは病気ではないのかな?退院して行ったけれど、やっぱり寝言は続けてるのだろうか?

電気で遊ぶおじさん

何度も入院しているので、色んな人がいるけれど、他に、インパクトのあった人でいくと、タブレット端末で、小さなボリュームでお経を流し続ける人がいた。夜になると、微かなボリュームでお経が流れ、チーン、チーン、と金の音が聞こえるという。

最初は夜に微かに聞こえて来るだけだったけれど、そのおじいさんは、突然、4人部屋の電気をカチ、カチと、点けたり消したりを繰り返し始めるという。部屋にいる僕はビックリ。何度も何度も、カチ、カチ、と部屋の電気を点けたり消したり。

「おいおい」と、心の中で突っ込みを入れつつ(笑)、ナースコールを押す、という。そのおじいさんは、タブレットでお経を聴いてるハイテクおじいさんだったのに、そのうち、名前を聞かれても答えられなくなっていた。

名前を忘れるのは、何人か同室の人でいた。これはボケ始めたのか、入院で現れる健忘か。何人かそういう人がいた。

歌を歌う人

最後にもう1人。このおじさんは忘れられない。知り合いでないし、同室でもない。でも、ずっと、壊れたレコードのように歌い続けていた。

everybody love somebody sometime

ずっと、このワンフレーズを歌っていた。

誰かが誰かを愛してる

まるで壊れたレコードのように、このフレーズをずっと歌っていた。そのフレーズは廊下を渡って、僕の病室へ届く。何十回、何百回と。

everybody love somebody sometime

そのおじさんのベッドのテーブルには、ご飯が手つかずで置いてあり、ずっと歌い続けていた。たまに、夕ご飯置くからね、と昼ごはんがスライド式に片付けられていく。

誰かが誰かを愛してる

おじさんは、ベッドに横になりながら、歌い続けていた。お見舞いの人を見たことはない。ただ、ずっと歌い続けていた。

everybody love somebody sometime

退院して、ふと、このフレーズを思い出して、歌う時がある。寂しいけれど、祈りに近い、歌だなと、思う。

誰かが誰かを愛してる

ABOUT ME
kenken
2015年11月に肺腺がんステージ4、余命1年の宣告を受ける。 只今、元気にアディショナルタイムを駆け抜け中! 呟いたりもします。 noteも始めました。